50〜56. 冠動脈閉塞を示唆!?
STEMI同様の危ない心電図 「STEMI equivalents」
典型的なST上昇を伴わないが、STEMIと同様に、冠動脈の急性閉塞を示唆する心電図のことを『STEMI equivalents』と呼びます。胸痛を伴う患者のST上昇はもちろんのこと、これらの変化を見逃さないよう、心電図読影のスキルアップを目指しましょう!
STEMI equivalents①
既知の左脚ブロックとSgarbossa's criteria
左脚ブロックではもともとST変化を伴っており(二次性のST変化)、STEMIとして有意なST変化(一次性のST変化)を拾うために、Sgarbossa's criteriaなるものがあります。合計3点以上では、既知の左脚ブロックにおける急性心筋梗塞の診断に有効とされます。QRSの向きに対してのST変化の向きを「極性」と表現し、極性が一致しているものをconcordantな変化、極性が不一致なものをdiscordantな変化と呼びます。同様に心室ペースメーカー波形にも応用できます。なお、このSgarbossa's criteriaの3つ目の基準を修正したmodified Sgarbossa's ruleというものが2012年にAnn Emerg Medでています。感度がやや向上するとか!
- 胸痛+『新規』の左脚ブロック → STEMIとして緊急の対応!
- 胸痛+『既知』の左脚ブロック → Sgarbossa's criteriaを確認しよう!
Sgarbossa criteria(原著)
- 【5点】QRSと極性が一致、concordantなST上昇 ≧ 1mm
- 【3点】V1、V2、V3でのST低下 ≧ 1mm
- 【2点】QRSと極性が不一致、discordantなST上昇 ≧ 5mm
- 合計3点以上は、急性心筋梗塞の診断に有効かも。
Modified Sgarbossa's rule
- 【1点】QRSと極性が一致、concordantなST上昇 ≧ 1mm
- 【1点】V1、V2、V3でのST低下 ≧ 1mm
- 【1点】QRSと極性不一致のST上昇 ≧ 1mm かつ ST/T≦ -0.25
- 合計1点以上は、急性心筋梗塞の診断に有効かも。
STEMI equivalents ②
de Winter ST/T wave complex
- 前胸部誘導で1〜3ミリのST低下とupslope型の波形
- +高く左右対称型のT波(二等辺三角形のような形)
- 前璧の心筋梗塞、特にLAD近位部の閉塞を示唆する!
STEMI equivalents ③
aVRでのST上昇
- aVRでのST上昇は、左室の広範な虚血を示唆!CABG適応となる左冠動脈本幹LMT病変や3枝病変かもしれないため注意が必要!
- 以下の場合はLMT病変を強く疑う!
- V1やaVLのST上昇を伴う
- aVRのST上昇 > V1のST上昇
- aVRのST上昇 ≧ 1.5mm※
※治療遅延で死亡75%
STEMI equivalents ④
Wellens' syndrome
- Wellens' syndromeとは、LAD左前下行枝の近位部狭窄を示唆する所見で、LAD coronary T wave syndrome とも呼ばれます。タイプは大きく以下の2つ。
- TypeA:胸部誘導、特にV2−3で左右対称なT波の逆転(76%)
- TypeB:二相性のT波、Wellens' biphasic T wave(24%)
- これらの特徴的な所見は、胸痛の改善した安静時にみられ、 胸痛発作時はST−T波は正常化もしくは上昇します。この変化はpseudo normalizationと呼ばれます。
- * このような患者は負荷試験を受けるべきではなく、直接冠動脈造影が必要です。
- 近い将来に心筋梗塞に至るリスクが高い! 心電図は経時的な変化も大事ですね。
STEMI equivalents ⑤
Hyperacute T wave
- 心筋梗塞の超急性期所見(hyperacute phase)では、T波が先鋭化(Hyperacute T wave)し、ST部は非特異的な上昇がみられます。
- T波増高が疑われたら, まずは以下の緊急疾患を鑑別しましょう!
- 急性心筋梗塞超急性期:上行脚が上に凸のT波
- 高カリウム血症:テント状T波
STEMI equivalents ⑥
後壁梗塞 posterior infarction
- NSTEMI中に隠れている後壁梗塞を見逃さないようにしましょう。
- 胸部誘導V1〜3のST低下があれば必ず後壁梗塞を疑う
- 下壁誘導Ⅱ、Ⅲ、aVfのST上昇を伴うことが多い
- 疑わしければV7〜9(後壁誘導)を追加しST上昇を確認!
- Ⅱ<ⅢでのST↑なら責任血管はLCXのことが多い
- 一方、V1でのST↑、Ⅲ>ⅡでのST↑で右室梗塞を疑う
- V1の大きなRは後壁誘導のQ波を表す
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