当科では幅広いジャンルの医学情報の収集に努めています。NCDや感染症が多い中、プライマリ・ケア、ワクチンを嫌がることなどは割と身近な問題ですね。のんびり浅く広く、時に深く、みんなで学んで行きたいですね!
- 大気汚染・気象変化
- NCD(生活習慣病)
- インフルエンザのパンデミック
- 干ばつや戦争などによる環境環境
- 多剤耐性菌の出現
- エボラなど高い驚異の病原体
- プライマリケアが弱いこと
- ワクチンを嫌がること
- デング熱
- HIV感染
- HEART score
- HEART Pathway
- New Vancouver Chest Pain rule
- ADP(2h-Accelerated Diagnostic Protocol)
- ESC2015 0h/1h rule-in & rule-out algorithm
- ESC2015 0h/3h rule-out algorithm ※添付写真参照
臨床予測ルールとは
- 臨床予測ルール(Clinical prediction rule:CPRs)とは、症状や検査を組み合わせて点数化することで、対象となる疾患を持つ可能性を層別化する臨床手法です。
- 予測する結果には、診断の他、予後や治療などが挙げられます。今回ご紹介したのは、急性冠症候群、特にNSTEMIやUAPを如何に早急に確実にルールイン、ルールアウトしていくか。 北海道家庭医療学センターのサイトで、Clinical prediction ruleのメリット、デメリットが良くまとまっています。ぜひご確認を!
火災現場での煙吸引による疾患は、上気道損傷(気道熱傷や気道閉塞)と下気道損傷(①ガス中毒、②ARDS、③肺炎)に分けて考えると良い。
- 来院後すぐに気道熱傷, 気道閉塞の評価を行う。古典的には顔面熱傷, 鼻毛の焦げ, 病歴から判断される。また、低酸素, ラ音, rhonchiなどが聞こえることもある。ただし、これらが聞こえる、もしくはレントゲンで異常が現れた時点でかなり重症であり、早期介入を要する。
- これらの所見がないときには、喉頭鏡検査で口腔咽頭の紅斑や腫脹を確認し、さらに疑わしければ気管支鏡による診断を組み合わせる。問題なければ24時間のclosed monitoringが推奨される(実際には自宅での経過観察を指示していることが多い)。
- ガス中毒として重要なのが、①一酸化炭素中毒、②メトヘモグロビン血症、③シアン中毒である。いずれもSpO2, PaO2は正常となり、顔色も良いため注意が必要!血液ガスによる診断が可能で, SaO2とSpO2の解離、CO-Hb、MetHb、乳酸値を必ずチェックする。
- なお、遅発性の合併症として, 肺炎やARDS(3、4日後に起こることもある)があり、これらの症状についても説明しておくと良い。
① 一酸化炭素中毒
- CO-Hb>25%や意識障害、痙攣、失神、心筋酵素逸脱、心電図で虚血性変化を起こしたものは治療適応である。合併症として心筋障害を伴うため、CK, CKMB, 心筋トロポニンTを確認すること。
- ガス中毒を疑った場合全例に、100%の高濃度酸素を流す。重症例に対しては、HBO高圧酸素療法という方法もあるが、その意義についてはcontravercialである。CO-Hbの半減期は、空気呼吸:320分、100%酸素:60分、高気圧酸素HBO:23分とされている。
- 関連項目:CO中毒の新デバイス『ClearMate™』
② シアン中毒
- 意識障害、尿酸Lac↑、アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシス、SpO2↑が特徴。血清乳酸Lac>72mg/dl(8mmol/l)は、血中シアン濃度>1.0mg/lに対して感度94%、特異度70%で診断可能とされる。
- 治療としては, ヒドロキソコバラミン、亜硝酸製剤、チオ硫酸ナトリウムを用いる。なお、CO中毒を合併している場合の亜硝酸剤の投与は、COHb により酸素運搬が低下しているところに、メトヘモグロビン生成で酸素運搬がより障害されるので控えるべきと言われています。
③ メトヘモグロビン血症
- MtHb 30%以上で治療介入、もしくは症状ありの20%以上で治療を行う。
- 治療はメチレンブルー静注50mg®1回1~2mg/kgを5分以上かけて静注。
気道熱傷(西伊豆早朝カンファレンスより引用)
NEJM 2016 Aug
4;375(5):464-9.
- 熱傷面積20%以上の患者で気道熱傷は独立した死亡予測因子。
- 火災時の空気温度は床で低く、数十㎝高いと数百度!歩伏前進せよ!
- 直接気道熱傷は一般に声門上レベルに限られる。
- 工場など高圧の煙を吸い込むと声門以下に及ぶ。
- 一酸化炭素中毒(COHb)はまず頭痛で始まる。
- 一酸化炭素中毒は6時間100%酸素投与!高圧室は減圧時エア塞栓起こすことも。
- 持続的acidosisはシアン中毒考えVB12 (hydroxocobalamin)投与!
- 気道熱傷疑うのは鼻・口周囲熱傷、焼けた鼻毛、口内の煤、嗄声、wheeze/stridor。
- 気道熱傷直後の胸部X線はたいてい正常!CTは重症度判定に役立つ。
- 熱傷面積20%以下は頭部挙上、湿潤空気、2時間毎観察で十分。
- 20%以上広範熱傷、顔面浮腫、嗄声、stridorは要注意、挿管準備!
- 再挿管は困難なので抜管されぬよう注意!
- 抗菌薬、ステロイド予防投与不要。
-
気道攣縮にβアゴニスト。
- →西伊豆早朝カンファレンス詳細はこちら(ブックマークをお薦めします!)
- 今回、新たにFDA認証を取得した『ClearMate™』 は、一酸化炭素除去を速めることを目的とした簡易機器です。6kgと移動も可能なサイズで、電源不要な空気圧式の動力源となっています。100%酸素と、二酸化炭素濃度を上げたガスを供給することで、患者の呼吸数上昇を誘発し、速やかに一酸化炭素を排泄するというのが原理のようです。除去速度は HBO > ClearMate > 100%酸素の順で、これまで機器関連合併症の報告はないとされています。
- こちら先日紹介したNEJM Journal Watchから引用です。一酸化炭素中毒(以下、CO中毒)は最も頻度の多い中毒とされ、時に入院が必要となり、重症例では死亡することもあります。CO中毒の標準治療は100%酸素投与で、重症時には高圧酸素療法HBOを検討していきます。ただし、後者のHBOがある施設は限られています。当院も救命センターではありますが、重症CO中毒の場合は近隣のセンターへ転院搬送させています。高圧酸素療法HBO可能な施設までの転院に時間を要するような地方の病院での導入は良いかもしれませんね。臨床試験の結果は近日中にリリースされるようです。
最初の5つで『5I』とすることが多いかもしれません。ちなみに妊娠合併の劇症型1型は、腹痛が少なく、より急激な経過の傾向があるといわれています!(以下参照)
- Insulin deficiency インスリン不足
- Infection/Inflammation 感染症や炎症
- Ischemia/Infarction 心筋梗塞や脳梗塞
- Intra-abdominal process 膵炎や胆嚢炎
- Iatrogenic 医原性
- Infant 妊娠関連
- Injury 外傷ストレス
- Intoxication アルコール中毒
Clinical and immunogenetic characteristics of fulminant type 1 diabetes associated with pregnancy.
J Clin Endocrinol Metab. 2006 Feb;91(2):471-6.
OBJECTIVE
The objective of this study was to characterize the clinical and immunogenetic features of Japanese pregnancy-associated fulminant type 1 diabetes (PF). A group of patients with PF was compared with a group of patients of child-bearing age with fulminant type 1 diabetes that was not associated with pregnancy (NPF) in a nationwide survey conducted from 2000-2004.
PATIENT
The clinical characteristics of the 22 patients in the PF group were compared with those of the 48 patients in the NPF group. Human leukocyte antigen (HLA) class II DR and DQ genotyping of 17 PF and 20 NPF patients was performed.
RESULT
Arterial pH was significantly lower (P = 0.0366), and amylase values tended to increase in PF patients compared with NPF patients (P = 0.0515). In 22 PF patients, 18 developed disease during pregnancy (26.3 wk; range, 7-38), whereas four cases occurred immediately after delivery (10.5 d; range, 7-14 d). Twelve cases that developed during pregnancy resulted in stillbirth (67%), and five of the six fetal cases that survived were delivered by cesarean section. The haplotype frequency of HLA DRB1*0901-DQB1*0303 in PF was significantly higher than those in NPF (P = 0.0244) and controls (P = 0.0001), whereas that of DRB1*0405-DQB1*0401 in NPF was significantly higher than those in PF (P = 0.0162) and controls (P < 0.0001).
CONCLUTION
The clinical symptoms of PF patients were more severe than those of NPF patients, and the prognosis of their fetuses was extremely poor. The type 1 diabetes-susceptible HLA class II haplotype is distinct in PF and NPF patients, suggesting that different HLA haplotypes underlie the presentation of PF or NPF.
The objective of this study was to characterize the clinical and immunogenetic features of Japanese pregnancy-associated fulminant type 1 diabetes (PF). A group of patients with PF was compared with a group of patients of child-bearing age with fulminant type 1 diabetes that was not associated with pregnancy (NPF) in a nationwide survey conducted from 2000-2004.
PATIENT
The clinical characteristics of the 22 patients in the PF group were compared with those of the 48 patients in the NPF group. Human leukocyte antigen (HLA) class II DR and DQ genotyping of 17 PF and 20 NPF patients was performed.
RESULT
Arterial pH was significantly lower (P = 0.0366), and amylase values tended to increase in PF patients compared with NPF patients (P = 0.0515). In 22 PF patients, 18 developed disease during pregnancy (26.3 wk; range, 7-38), whereas four cases occurred immediately after delivery (10.5 d; range, 7-14 d). Twelve cases that developed during pregnancy resulted in stillbirth (67%), and five of the six fetal cases that survived were delivered by cesarean section. The haplotype frequency of HLA DRB1*0901-DQB1*0303 in PF was significantly higher than those in NPF (P = 0.0244) and controls (P = 0.0001), whereas that of DRB1*0405-DQB1*0401 in NPF was significantly higher than those in PF (P = 0.0162) and controls (P < 0.0001).
CONCLUTION
The clinical symptoms of PF patients were more severe than those of NPF patients, and the prognosis of their fetuses was extremely poor. The type 1 diabetes-susceptible HLA class II haplotype is distinct in PF and NPF patients, suggesting that different HLA haplotypes underlie the presentation of PF or NPF.
- 鼻出血は最も多い耳鼻科咽喉科救急のひとつ!原因が何であれ、まず止血させることが肝要です。特に高齢者や抗凝固薬内服中の大量出血に注意しましょう。
- まずは用指的圧迫で対応します。この際、体勢が大事で、上向いちゃいけません!前傾姿勢で飲み込まないのがポイントです。
- 介入可能であればボスミン液付きのガーゼ挿入!ERには希釈ボスミンがなければ自分で作ってみよう
鼻出血とトラネキサム酸
Lancet. 2018 Jan 13;391(10116):125-132.
- 鼻出血に対するトラネキサム酸パッキングも、最近はトレンドですが、ルーチンで行っている施設はありますか?事前準備のコツや感想あればぜひコメントどうぞ!
- Effect of treatment delay on the effectiveness and safety of antifibrinolytics in acute severe haemorrhage: a meta-analysis of individual patient-level data from 40 138 bleeding patients.
- 先日のNEJMに、肺塞栓症PEを疑う妊婦に対するYEARS algorithmについての論文が掲載されていました。通常の対応と異なるのは、添付の写真で背景を薄い灰色で囲った部分です。
- 深部静脈血栓症DVTの疑いがあればDダイマーがどうであろうと、圧迫法で下肢静脈エコーをして、血栓があれば抗凝固療法を開始、造影CTは回避しましょうと。写真ではPERCルールについてあえて載せましたが、妊婦に適応できるかどうかvalidationは不十分なので注意が必要です。ただ、妊婦を含んだ多くの患者がこの流れでで対応できるかと思います。
Pregnancy-Adapted YEARS Algorithm for Diagnosis of Suspected Pulmonary Embolism.
NEJM. 2019 Mar 21;380(12):1139-1149.
Background
肺塞栓症は,西欧諸国における妊産婦死亡の主な原因の 1 つである.D ダイマー検査の特異度と感度が低いため,肺塞栓症が疑われる妊娠女性は全員が CT 肺血管造影または肺換気血流スキャンを受けるが,いずれの検査も母体と胎児が被曝する.肺塞栓症が疑われる妊娠女性を診断するための画像検査を安全に回避する目的で,妊娠に適応させたアルゴリズムを用いることができるかどうかは明らかではない.
Method
肺塞栓症が疑われる妊娠女性を対象とした前向き研究で,YEARS アルゴリズムに基づく 3 つの基準(深部静脈血栓症の臨床徴候があるか,喀血の報告があるか,肺塞栓症の可能性がもっとも高いと考えられるか)を評価し,D ダイマー値を測定した.3 つの基準を 1 つも満たさず,Dダイマー値が 1,000 ng/mL 未満である場合,または,3 つの基準のうちの 1 つ以上を満たし,Dダイマー値が 500 ng/mL 未満である場合は,肺塞栓症を除外した.妊娠女性のための YEARS アルゴリズムでは,深部静脈血栓症の症状がある女性に対する圧迫法による超音波検査が含まれ,その結果が陽性の場合(すなわち血栓が存在する場合)は CT 肺血管造影は行われなかった.肺塞栓症が除外されなかった患者全例が CT 肺血管造影を受けた.主要評価項目は 3 ヵ月の時点での静脈血栓塞栓症の発症率とした.副次的評価項目は,肺塞栓症を安全に除外するうえで CT 肺血管造影が適応とならなかった患者の割合とした.
Result
510 例がスクリーニングされ,うち 12 例(2.4%)が除外された.ベースラインの時点で 20 例(4.0%)が肺塞栓症と診断された.追跡期間中に,膝窩深部静脈血栓症が 1 例(0.21%,95%信頼区間 [CI] 0.04~1.2)で診断されたが,肺塞栓症の患者はいなかった.CT 肺血管造影は 195 例(39%,95% CI 35~44)で適応なしとされ,したがって回避された.このアルゴリズムの有効性は,妊娠第 1 三半期にもっとも高く,第 3 三半期にもっとも低く,CT 肺血管造影が回避された患者の割合は,妊娠第 1 三半期に研究を開始した患者で 65%,第 3 三半期に研究を開始した患者で 32%であった.
Conclusion
肺塞栓症は,妊娠に適応させた YEARS 診断アルゴリズムによって,妊娠三半期の全期を通じて安全に除外された.CT 肺血管造影は患者の 32~65%で回避された.(ライデン大学医療センターほか 17 の参加病院から研究助成を受けた.Artemis 試験:Netherlands Trial Register 番号 NL5726)
肺塞栓症は,西欧諸国における妊産婦死亡の主な原因の 1 つである.D ダイマー検査の特異度と感度が低いため,肺塞栓症が疑われる妊娠女性は全員が CT 肺血管造影または肺換気血流スキャンを受けるが,いずれの検査も母体と胎児が被曝する.肺塞栓症が疑われる妊娠女性を診断するための画像検査を安全に回避する目的で,妊娠に適応させたアルゴリズムを用いることができるかどうかは明らかではない.
Method
肺塞栓症が疑われる妊娠女性を対象とした前向き研究で,YEARS アルゴリズムに基づく 3 つの基準(深部静脈血栓症の臨床徴候があるか,喀血の報告があるか,肺塞栓症の可能性がもっとも高いと考えられるか)を評価し,D ダイマー値を測定した.3 つの基準を 1 つも満たさず,Dダイマー値が 1,000 ng/mL 未満である場合,または,3 つの基準のうちの 1 つ以上を満たし,Dダイマー値が 500 ng/mL 未満である場合は,肺塞栓症を除外した.妊娠女性のための YEARS アルゴリズムでは,深部静脈血栓症の症状がある女性に対する圧迫法による超音波検査が含まれ,その結果が陽性の場合(すなわち血栓が存在する場合)は CT 肺血管造影は行われなかった.肺塞栓症が除外されなかった患者全例が CT 肺血管造影を受けた.主要評価項目は 3 ヵ月の時点での静脈血栓塞栓症の発症率とした.副次的評価項目は,肺塞栓症を安全に除外するうえで CT 肺血管造影が適応とならなかった患者の割合とした.
Result
510 例がスクリーニングされ,うち 12 例(2.4%)が除外された.ベースラインの時点で 20 例(4.0%)が肺塞栓症と診断された.追跡期間中に,膝窩深部静脈血栓症が 1 例(0.21%,95%信頼区間 [CI] 0.04~1.2)で診断されたが,肺塞栓症の患者はいなかった.CT 肺血管造影は 195 例(39%,95% CI 35~44)で適応なしとされ,したがって回避された.このアルゴリズムの有効性は,妊娠第 1 三半期にもっとも高く,第 3 三半期にもっとも低く,CT 肺血管造影が回避された患者の割合は,妊娠第 1 三半期に研究を開始した患者で 65%,第 3 三半期に研究を開始した患者で 32%であった.
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