36. 下部消化管出血で造影CTは必須?
下部消化管出血 イギリス版最新ガイドライン
Diagnosis and management of acute lower gastrointestinal bleeding: guidelines from the British Society of Gastroenterology- イギリスで初めての下部消化管出血のガイドラインが公開!
- shock index >1 の循環不安定患者 または 活動性出血疑いで造影CTの撮像を推奨!
- shock index=脈拍数÷血圧、ただしβ遮断薬の使用、高齢者には要注意!
Oakland scoreとは
- hock index <1の安定した患者では Oakland scoreなどによるリスク層別化が推奨されています(weak recommendation, moderate quality evidence)。
- 計算ツールはこちら!
- 現行の胆管炎の診断基準(TG18)に『腹痛』の項目はありません。胆管炎での腹痛はCharcotの3徴(腹痛、発熱、黄疸)のうちの一つとして胆管炎診断の一助としてきました。
- しかし、Charcotの3徴の全項目が揃うことは50-70%とされています。右上腹部の圧痛の出現は65%程度。総胆管は、その腹側表面を膵臓、十二指腸、肝臓などに覆われているため、直接の圧痛が出にくいとされています。
- 日本発信の胆嚢炎・胆管炎診断のTokyo guidleines(TG)に関しても、TG07では胆管炎の診断で、Charcotの3徴を用いていましたが、TG13ではその感度、特異度の問題点が指摘され診断基準から『腹痛』の項目が削除されたという背景があります。TG18での診断基準の変更はありません。
- また余談ですが、肝胆道感染症に関してmurphyより肝叩打痛のほうが感度が高いという研究を、皆さんご存知の『内科診断リファレンス』の著者の上田先生が論文にしています。
- wake up strokeとは、目覚めに症状がある脳卒中のことです。これまでは発症時刻不明で最長4.5時間以上経過していると推定される場合には、t-PA適応満たせず…。
- しかし2019年3月にtPA適正治療指針第3版が更新され、wake up strokeにも『条件を満たせば』tPAが投与できることに!MRIによる発症時刻推定が必要(DWI/FLAIRミスマッチ ※以下参照)となります。救える脳、救える生活がさらに増えるかもしれません。
その他の変更点
- 以下、国立循環器研究センターHPより引用。
- 従来は、脳梗塞発症から4.5時間以内に静注血栓溶解療法を始めることが、治療の有効性と安全性を考慮した上での鉄則でした。睡眠中発症や発症時同伴者不在のため発症時刻が明らかでない場合は、「無症状であることが最後に確認された時刻(睡眠中発症例では、就床した時刻)」から4.5時間以内の治療開始が求められ、このようなタイプの脳梗塞患者への静注血栓溶解療法施行はほぼ不可能でした。今回、欧州で行われた臨床試験(WAKE-UP試験 ※疑問39を参照)の試験結果に基づいて、MRIを用いて発症から4.5時間以内と推定できる所見(いわゆるDWI/FLAIRミスマッチ)を得た場合は、静注血栓溶解療法の施行を考慮しても良いという、推奨を増やしました。MRIの撮影方法や、治療法選択の判断の詳しい方法は、指針をお読みください。なお、この推奨は海外の一つの試験結果のみに基づくもので、推奨グレードは高くありません。国内外で同様の試験が行われており、これらの最終結果を待って、より科学性の高い推奨グレードへの改訂を目指します。
- 抗血栓薬投与中、とくに抗凝固療法中の患者には、静注血栓溶解療法の選択を慎重に検討する必要があります。近年新規薬剤の開発とともに事情が様変わりしつつある抗凝固療法中の患者への治療法選択について、2017年に日本脳卒中学会が公表した「抗凝固療法中患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨」の内容を採り入れ、大幅に改変しました。
- 急性期脳梗塞患者への血管内治療は、日進月歩で新たな知見が現れています。2018年に公表された「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第三版」(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会 三学会合同指針作成委員会)と連動させて、静注血栓溶解療法と機械的血栓回収療法を組み合わせて行う場合の推奨を、書き直しました。
- NEJM2018年のWAKE-UP試験が根拠となっています。対象は起床時に発見または発症時刻不明の脳梗塞で、そのうち、DWI/FLAIRミスマッチがある患者。tPA群 vs プラセボ群 でRCT double blindを実施。なお、tPAはMRIから1h以内かつ発見から4.5h以内に施行。結果、tPA群の方が3カ月後の機能予後が有意に良好であり、今回のガイドライン改訂に至りました。
- この結果、一見とっても最高!ただし、血栓回収の予定がある患者、MCA 1/3以上の脳梗塞、NIHSS>25の重症患者が除外されています。対象は限られますね。また、tPA投与群(アルテプラーゼを使用)で死亡率が高い傾向(4.1% vs 1.2%:OR
3.38, 95%CI 0.92-12.52)にあり、早期打ち切りになっています。効果を過大評価し、安全性の確率は十分に行えていない可能性があります。今後、当院でも脳卒中プロトコールにどのように反映していくは協議中です。皆さんの病院でも一定のプロトコールがございますか?
▼WAKE-UP試験
NEJM 2018; 379:611-622 https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1804355
40. 蘇生後のその後。 非ST上昇もすぐ冠動脈造影?
非ST上昇の蘇生後患者の冠動脈造影
Lemkes JS et al. Coronary angiography after cardiac arrest without ST-segment elevation. N Engl J Med 2019 Mar 18.- 先日のNEJM Journal Watchでも紹介されていた論文です。ちなみに現在のACLS2015推奨は、「ST上昇を伴うすべての患者,ST上昇を伴わないが血行動態が不安定または電気的に不安定で心血管病変が 疑われる患者に対し,緊急の冠動脈造影が推奨される」となっています。それでは、心筋虚血を示唆しない場合の冠動脈造影の意義は?
- 初期波形shockableの蘇生後患者が対象のstudy。早期の冠動脈造影vs神経予後確認後の冠動脈造影で比較。結果は、90日生存率、他副次項目に有意差なし。有意差があったのは低体温療法の開始時間。
- メリスロン(ベタヒスチンメシル酸塩)とは、強力なH3拮抗と弱いH1刺激作用を有する経口薬です。認可されているのは日本とドイツぐらいで、米国FDAは認可しておらず、コクランでも非推奨となってます。機序として、用量依存性にH3受容体を介し蝸牛血量を増加することで症状を改善するとされていますが、その効果は果たして!?
- BEMED試験: 2016年 ドイツでのメニエール病に対するRCT
-
- P:21-80歳のメニエール病患者221人
- I:低用量24mg2x or 高用量36mg3xを9ヶ月間
- C:プラセボを9ヶ月間内服
- O:内服7-9ヶ月間のめまい頻度(日誌自己申告)
- T:RCT ITT解析 単盲検
- → 結果は「有意差なし」
- それなりにしっかりと診断されたメニエール病に対して有意差がないとなると、急性期の診断もいまいちなAcute severe dizinessにはなおさら効果ない気がしています。また、H1刺激作用があるのであれば、H1ブロッカーであるアタラックスP®やドラマミン®と併用するのは…。(これらは前庭神経核のレセプターがH1であることから効果があるとされている薬、個人的にはこちらだけ使用しています)。他にもメイロン®(三半規管⇛迷路⇛メイロンが由来)、アデホス®(半減期異常に短い)など、めまいの診療はエビデンスがない分難しいですね。皆さんどうされていますか?
- みんな大好きUpToDate®を確認!
- 乗り物酔いのなりやすさには個人差があり、女性、特に妊婦、小児、片頭痛患者が酔いやすいとされています。
- 乗り物酔い急性症状に対する治療は無効とされます。そのため、大事なのは乗車前の予防です!地平線を見て動きが最小の座席を陣取る、スコポラミンや抗ヒスタミン薬を内服するなどの方法が推奨されています。
- ERで診療していると、時にはこんな相談も。生姜飴やAcupressure bands(手首に巻く乗り物酔いバンド ※写真参照)にもちょっとしたエビデンスがあるらしいですね、浅く広く、疑問は尽きないものです。ちなみに写真は当科の釣りイベント時の若手スタッフ、乗車前の予防がいまいちでした。
▼UpToDate® Motion sickness
https://www.uptodate.com/contents/motion-sickness
漢方の五苓散と乗り物酔い・二日酔い
- 離島医療に関わる読者からのコメント:乗り物酔いの予防として「五苓散」をよく利用しています。エビデンスはあるのでしょうか??
- これぐらいしか論文見つかりませんでした(PMID 23837690)。術前に飲ませてPONV減るようなので、機序は少し違いますが船酔いにも効きそうですかね 漢方はエビデンスとしては乏しいですが、実臨床では急性期でも多用しています。
-
Kori K, et al. J Altern Complement Med. 2013.
Go-rei-San, a Kampo medicine, reduces postoperative nausea and vomiting: a prospective, single-blind, randomized trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/23837690 - 余談ですが、 二日酔い予防のための漢方飲み方(例) 。飲み会前に黄連解毒湯、飲み会終了後、寝る前に五苓散 起床後にも黄連解毒湯+五苓散で、だいたい問題ないと思います。 島根では日本酒をよく飲みますが、合わせて「和らぎ水」という名のチェイサーが出されます。自分が二日酔いのときも、アルコールの抗ADH作用とその反応尿量、体内の水分バランスなどを考えながら、五苓散のアクアポリンへの作用を妄想しています笑。完全に余談でした。
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